吐き出す息が白くなり始めた頃
は冷えた指先を口元へ持って行き 何度も息を吹きかけ擦り合わせていた

俺は両手をポケットに突っ込み 硬く握り締める事しか出来ず
俺たちは無言のまま 只管夜空を眺め続けた




ほんの数分だったかもしれないし もう数十分此処でこうしていたかも知れねぇ

先に口を開いたのはのほうで
やけに明るいその声が 明日は確実にやってくるのだと思わせた




「ねぇ一護 不思議だよね

 わたしたちが今見てる星ってさ 本当はすっごく昔に放たれた光でしょ
 それが今こうして すっごく離れた場所からでも光って見えるなんて

 …だからなのかな 人が星に願いを託すのは
 例えどんなに離れていても どんなに時間が経ったとしても
 きっと願いが届くって そう信じていたいのかもしれないって

 …今そんな風に考えてた

 わたしって意外と乙女なんだなぁ 新しい発見だわ」



「…自分で言うかよ」




気の利いた科白ひとつ言えない俺は ずっと視線を夜空に向けたまま
そんな俺の耳にタイムリミットを告げる携帯の着信音が響いた

は携帯へ手を伸ばしその画面を確認してから俺に向き直り
はっきりとは覚えてねぇけど たしかは笑顔を見せたんだと思う
そしては何も言わずに右手を差し出し 俺はその手を取って握手を交わした

その時必死に暖めていたはずのの指先は驚くほど冷たくて小さく震えていて
やっぱり俺は何も言う事が出来なかった







あれから数年経った今 俺の前に現れたはやっぱり笑顔で
大人びたような気もするし 何一つ変わっていないような気もしてる

俺はきっとこれから何年経っても この目の前のの笑顔だけは忘れる事はない

漠然とだけどそう思う




そしてもうひとつ
きっと何年経っても忘れる事無い…
君 と 見 上 げ た あ の 星 空
企画:全てによる祝福を
written by   Daisy Daisy あき