私が死んだら、あなたは 「どうなるの?」とは僕の表情から心を読み取るかのように、僕の顔をじっと見てきた。の話はいつも唐突だ。でもそれを僕は嫌だとは思ってなかったし、むしろ楽しみにしていた節もあった。今回だってそうだ。「私が死んだら、ライトはどうなるの?」と、唐突に問い掛けてきた。どうする?ではなく、どうなるの?だ。僕はそこがらしいだなんて思いながら、が消える現実を想像してみる。誰かに殺されてしまう。もしくは事故で死んでしまう。自殺…はないだろう。ああ、僕自身が手にかけてしまうことも想像しておかなければいけない。(もっともこれが現実になろうとしているのだけど、)そして一通り考えて、僕は一つの答えを口にした。 「後悔はしないと思うよ でも少し、淋しいかな」 後悔はしない。なぜなら僕は新世界の神になるからだ。神になるために障害となるものは、すべて消さなければならない。いくら幼馴染だといっても、だって例外ではない。そういう情に流される奴は、最後に必ず失敗するのだ。僕はそんな失敗はしない。ああ、。君の頭が良くなければ、もしかしたら長く生きられたかもしれないのにね。でもがその辺にいるような馬鹿だったら、僕は君に興味は持っていなかったんだろうな。 僕の答えには伏し目がちに「…そう、」とだけ呟いた。命乞いでもするんだろうか。僕はそんなの様子をじっと見ながら考える。きっとはしないだろう。むしろ微笑うんだろう、な。 「…ねえ、ライト」 「ん?」 「淋しいって言ってくれてありがとう」 「………」 僕の予想通り、顔を上げたは微笑っていた。穏やかに、すべて受け止めているように。僕は無意識に震える手を握り締めた。落ち着け。情に流されてはいけない。「じゃあ、もう帰るね」とが立ち上がった。僕は「…ああ」と頷きながらの背中を見送る。昔から見てきたこの背中も、今日で最後なのだ。がドアノブを握ってドアを開けた。そして廊下に右足を出す。途端、僕は徐にの腕を引いて、その唇に触れるだけのキスをした。まだ暖かい、と頭の隅で当然のことを思いながら、驚くをこの腕に閉じ込めた。そしてきつく抱き締めながら、彼女はこんなにも小さく儚かったのかと思う。こんな体のどこに、あんなに強い精神が存在するのだろう。 「…、ライト ごめんね」 「…!」 謝るなら僕の方だ、と心の中で叫びながら、今より強くを抱き締める。はいつもそうだ。誰よりもやさしくて、穏やかだ。そしていつも僕を振り回していた。今だって、僕は無意識にを殺すことを躊躇っている。 「できるだけ…痛くない死に方がいいな、」しばらく続いていた沈黙をが唐突に破った。僕はその言葉で現実に戻されて、それからやっとを放した。分かった、と小さく答える。そして今度こそは廊下に出て、僕を見て微笑むと背を向けて帰って行った。僕はすぐにノートを取り出して、シャーペンを握り締める。後ろから「いいのか?」とリュークが訊ねてきた。いいも何もないんだ。僕は答えずに、ノートにシャーペンを走らせた。 |